欧州ローカル列車のブログ

欧州ローカル列車の旅 のブログ編です。 ヨーロッパ各地を鉄道で旅行した時の様子を、1枚の写真と簡単な解説とでご紹介しています。

シネイ Ciney (ベルギー)

ナミュール(Namur)とルクセンブルク(Luxembourg)の間にある、シネイという小さな町の駅です。やはりビールの国ベルギーだけあって、町にはビール醸造所があり、シネイというブランドのビールを作っています。駅は分岐する路線もない中間駅ですが、追い越しのできる2面4線のホームがあります。こういう構造の駅は、欧州ではそれほど多くありません。幹線の駅とはいえ、地下道も跨線橋もなく、下車する人は構内踏切を渡って駅舎へと行きます。

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停車中の列車は2輌編成のローカル電車で、各駅に停まってナミュールまで行きます。ここで30分ほど停車して、ルクセンブルク発ブリュッセル行きのインターシティーを先に通します。しかし、停車時間も長いので、乗り通す人はほとんどいません。そもそも鈍行はいつもガラガラです。乗ってきた僅かな乗客は、ここで降りるか、さもなければインターシティーに乗り換えます。インターシティーも日本と違って特急券などの特別料金は必要ないので、しごく当然ですが、それだけに、各駅停車の方が風前の灯のような印象です。私も空いている鈍行でのんびりと行きたかったのですが、発車までの時間が長すぎるので、ここでインターシティーに乗り換えました。インターシティーの方はかなりの席が埋まっていて、窮屈な旅でした。それでも鈍行でゆっくり行く人など誰もいません。

(撮影:2012年12月)

コリーン Kolín (チェコ)

首都プラハから55キロという、遠すぎず近すぎずの街、コリーンは、歴史的な古い街並みも残っているものの、今は工業都市のイメージが強い都市です。とりわけ重要なのが、日本のトヨタとフランスのプジョーが合弁で設けた自動車工場であり、今はそれが街の経済を支えていると言っても過言ではありません。

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コリーンは、プラハから東へ向かう幹線上の主要駅です。ここで分岐する路線もあり、活気があります。モダンな電車からローカル気動車、そして旧型客車列車まで、チェコの様々な車輌を見ることができます。しかし駅前は昔ながらの古びた街並みで、古く落ち着いた雰囲気の建物も多く、工業都市らしからぬ、旅人を和ませてくれる風情も合わせもっていました。

(撮影:2011年10月)

アルブフェイラ Albufeira (ポルトガル)

大西洋に面したポルトガル南部の町、アルブフェイラのあたりは、ヨーロッパ大陸の中では南国の雰囲気が強く出ている温暖な地域です。アルブフェイラは人口2万。白壁の家が並ぶ小リゾート地の雰囲気ですが、もともとは素朴な漁師町で、その名残りも感じられ、例えばスペインのマラガあたりに比べると、まだまだ俗化されていません。綺麗な砂浜もあり、物価の安さもあって、北部ヨーロッパからのリゾート客が年々増えているそうです。

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駅は残念ながら、街や海岸から遠い内陸にあります。市街地まで2キロ以上、海までは3キロ余りあるでしょう。駅舎内にバーがあって、駅前にはキヨスクのようなお店が1軒程度で、街との間はバスやタクシーが連絡しています。それでも観光客の乗降も見られます。駅舎は古いですが、跨線橋は最近できたと思われる、モダンなデザインです。ポルトガル独特のステンレスの客車列車が発車していくところですが、このタイプの客車も段々と少なくなっているようです。

(撮影:2012年4月)

キシュクンハラシ Kiskunhalas (ハンガリー)

ハンガリー南部の南大平原地方にある街、キシュクンハラシは、人口3万弱で、平原の中に古くから開けた所のようです。首都ブダペストから南下して国境を越えてセルビアへ行く幹線鉄道に、支線が分岐する、鉄道の要衝です。名産品のレース網みでも知られています。

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駅は典型的なハンガリーの地方都市のターミナルで、市街地とは少し離れています。大きな駅舎に低くて狭いホームが並んでいます。線路は沢山あって、停泊中の車輌も色々です。ここに写っているのは、電気機関車に客車が4輌つながったローカル列車で、ここキシュクンハラシが始発で、セルビア国境手前のケレビア(Kelebia)までの僅か30分を、途中3駅に停まって走ります。恐らく1輌でも十分な程度の乗客数でしょう。

(撮影:2013年1月)

ヘールレン・デ・キッセル Heerlen de Kissel (オランダ)

ヘールレン(Heerlen)は、オランダ南部のベルギーとドイツに挟まれたような地域、リンブルク(Limburg)地方にある人口9万ほどの都市です。海から割と遠く、標高が100メートルを超える、低地国オランダの中ではかなり高い所にある都市です。この地方はかつて鉱業で栄えた産業地域のため、マーストリヒト(Maastricht)を除けば観光地としては栄えていません。ヘールレンの街も特徴の薄い普通の商店街といった感じですが、国境が近いため、隣の国からの買い物客はそれなりに来るようです。

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このヘールレン・デ・キッセル駅は、ヘールレンから1.3キロの所に2007年に新設された、駅舎もない単線の無人駅です。オランダは鉄道利用度が高い国ですが、環境問題に敏感なお国柄なのか、さらに鉄道の利便性を高めようと、近年も新しい簡素な駅がこういったところに時おりできています。利用者は駅近くの住人ぐらいではないかと思います。

(撮影:2012年9月)

ロイウスドルフ Leubsdorf (ドイツ)

ライン川沿岸のボン(Bonn)とコブレンツ(Koblenz)の間といえば、ドイツの中でも都市化が進んだ開けた所を想像します。しかし実際に行ってみれば、思った以上に田舎の風景も多くみられます。この駅はライン川右岸にあり、地図で見ると駅の目の前に川がありそうだったので、降りてみました。実際には間に国道が走っていますが、その国道を渡れば、確かにすぐに河畔に立つことができました。しかし、ここでのライン川の風景はまことに渺茫たる、とりとめのない眺めで、天候のせいもあってか、素晴らしいものとは言えませんでした。こういう所は降りるのではなく、車窓から眺めるぐらいがちょうどいいのかもしれません。なお、この駅から直線距離で1.5キロほどの、ライン川左岸には、ジンツィッヒ(Sinzig)という駅があります。しかし、この前後にはライン川を渡る橋が全くないため、行こうとしても、徒歩では不可能で、列車でも車でも、相当な大回りをしなければなりません。

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この路線は普通列車が基本です。冬の閑散期だからか、乗客も短距離乗車の地元客ばかりでした。夏は観光客も乗るのでしょうか。やってきた列車は電気機関車が牽引する、モダンな2輌の2階建て客車でした。こういう列車が当たり前に見られるのがドイツの鉄道の特徴です。今も客車を新造しているようで、今後も客車列車の活躍は続きそうです。

(撮影:2012年1月)

ブレゲンツ Bregenz (オーストリア)

ブレゲンツは、オーストリア西部の細長い部分の一番北西の角にある国境の町です。ドイツとスイスの国境が近いものの、国境を越えても言語が変わらないため、外国というハードルは、一般に低い欧州の中でもかなり低そうです。町はボーデン湖の湖畔にあり、観光地としても知られています。駅は都市近郊にありそうな、割とモダンで特に味わいのない普通の駅ですし、入ってくる列車も新型電車が多く、地元の近距離旅客が多いです。そんな所に時々こうして長距離の客車列車が入ってくるのは、いいものです。客車列車にこだわりがある私でも、こればっかりの所へ行けば、そんなものかと思って、慣れて麻痺してしまいます。ここのように、たまに来るからこそ感動が増す、というようなものかもしれません。これは一日に4往復ある、チューリッヒとミュンヘンを結ぶEC特急で、オーストリアを走るのは僅か15分ぐらい。そのオーストリアの唯一の停車駅がここです。

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ややこしいことに、この近くには、ブルデンツ(Bludenz)という駅もあります。違う路線なのですが、フェルトキルヒ(Feldkirch)からは、ブレゲンツ行きとブルデンツ行きの両方の電車が出ます。もちろん、似ているとはいえ、十分判別できるのですが、それは一旦知ってからの話です。フェルトキルヒでブレゲンツへ行こうと思って、まだ時間があるなと思っていたら、ブルデンツ行きの電車が向こうのホームに入ってきて、慌てて走った経験があります。間違って乗ってしまう前に、違うらしいと気づいたので良かったのですが。

(撮影:2011年12月)

ビアリッツ Biarritz (フランス)

ビアリッツは、フランス南西部の大西洋岸、スペイン国境に近い所に位置する、この地方では良く知られた保養都市です。空港もあって、ヨーロッパ各地から案外多くのフライトがあります。ビアリッツの町の中心は海に面しているのですが、鉄道駅はそことは2キロほど離れた内陸の閑散とした所にあります。そのため、特に保養都市の玄関口の雰囲気もなく、ただの田舎駅の佇まいです。

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この列車は主要駅のみ停車のインターシティー。さしづめ特急なのですが、今はTGVがフランス全土、かなりの地域に走るようになったため、それに見慣れた目には一時代前の列車に見えます。しかもこのあたりは終着に近い末端区間なので、乗客も少ないです。客車内の雰囲気も、最新の電車とは違って、今やレトロに近いのですが、昔ながらの汽車の雰囲気は最高で、とても落ち着きます。このちょっと無骨な電気機関車もまたいいと思うのですが、どうしてみんな、こういう汽車よりTGVなんかに乗りたがるのでしょうか。

(撮影:2013年10月)