欧州ローカル列車のブログ

欧州ローカル列車の旅 のブログ編です。 ヨーロッパ各地を鉄道で旅行した時の様子を、1枚の写真と簡単な解説とでご紹介しています。

ブレゲンツ Bregenz (オーストリア)

ブレゲンツは、オーストリア西部の細長い部分の一番北西の角にある国境の町です。ドイツとスイスの国境が近いものの、国境を越えても言語が変わらないため、外国というハードルは、一般に低い欧州の中でもかなり低そうです。町はボーデン湖の湖畔にあり、観光地としても知られています。駅は都市近郊にありそうな、割とモダンで特に味わいのない普通の駅ですし、入ってくる列車も新型電車が多く、地元の近距離旅客が多いです。そんな所に時々こうして長距離の客車列車が入ってくるのは、いいものです。客車列車にこだわりがある私でも、こればっかりの所へ行けば、そんなものかと思って、慣れて麻痺してしまいます。ここのように、たまに来るからこそ感動が増す、というようなものかもしれません。これは一日に4往復ある、チューリッヒとミュンヘンを結ぶEC特急で、オーストリアを走るのは僅か15分ぐらい。そのオーストリアの唯一の停車駅がここです。

f:id:localtraineurope:20141007051336j:plain

ややこしいことに、この近くには、ブルデンツ(Bludenz)という駅もあります。違う路線なのですが、フェルトキルヒ(Feldkirch)からは、ブレゲンツ行きとブルデンツ行きの両方の電車が出ます。もちろん、似ているとはいえ、十分判別できるのですが、それは一旦知ってからの話です。フェルトキルヒでブレゲンツへ行こうと思って、まだ時間があるなと思っていたら、ブルデンツ行きの電車が向こうのホームに入ってきて、慌てて走った経験があります。間違って乗ってしまう前に、違うらしいと気づいたので良かったのですが。

(撮影:2011年12月)

ビアリッツ Biarritz (フランス)

ビアリッツは、フランス南西部の大西洋岸、スペイン国境に近い所に位置する、この地方では良く知られた保養都市です。空港もあって、ヨーロッパ各地から案外多くのフライトがあります。ビアリッツの町の中心は海に面しているのですが、鉄道駅はそことは2キロほど離れた内陸の閑散とした所にあります。そのため、特に保養都市の玄関口の雰囲気もなく、ただの田舎駅の佇まいです。

f:id:localtraineurope:20141004083751j:plain

この列車は主要駅のみ停車のインターシティー。さしづめ特急なのですが、今はTGVがフランス全土、かなりの地域に走るようになったため、それに見慣れた目には一時代前の列車に見えます。しかもこのあたりは終着に近い末端区間なので、乗客も少ないです。客車内の雰囲気も、最新の電車とは違って、今やレトロに近いのですが、昔ながらの汽車の雰囲気は最高で、とても落ち着きます。このちょっと無骨な電気機関車もまたいいと思うのですが、どうしてみんな、こういう汽車よりTGVなんかに乗りたがるのでしょうか。

(撮影:2013年10月)

パドヴァ Padova (イタリア)

多くの観光客が訪れる北東イタリアの古都、パドヴァです。鉄道の面でも路線が分岐合流する結節点となっており、周辺にもボローニャやベネツィアなどの都市があるため、ここで乗り換えたことのある人も多いでしょう。私はかなり昔、この駅の近くで1泊しましたが、その時は、歴史の厚みが街全体に漂っているようで、何となく重苦しさを覚えました。今回は、前回は無かった、レールが1本だけのトラムシステム(どちらかというとガイドバス)ができていて、駅前や町中を走っていました。それのせいなのかどうか、前回ほどの重みを感じずに駅周辺を歩き回ることができました。

f:id:localtraineurope:20141004025937j:plain

停車中の列車は、客車列車です。普通から快速あたりに広く使われる、イタリアでは標準的な車輌の一つです。運転台もついているので、折り返しの際にも機関車を付け替えることなく、機関車の後押しで走ります。頭端式ターミナルの多いヨーロッパで客車列車がこれだけ残っているのは、この手の運転台付き客車の存在が大きいはずです。

 (撮影:2011年12月)

イルン・フィコバ Irun Ficoba (スペイン)

スペインとフランスの国境の鉄橋です。両国の国鉄は線路幅が違うため、昔から列車の直通が面倒で、この区間も国境を越える列車はわずかです。それを補うかのように、1メートルゲージのスペインのバスク鉄道が、この橋を渡ってフランスの国境駅アンダイア(Hendaia)の国鉄駅前まで走っています。こちらは自動改札も導入された近代的な鉄道で、運転本数も多いです。

f:id:localtraineurope:20141004084747j:plain

一応スペインに分類しましたが、写真を撮るために立っている場所はフランスです。写っている列車は、大体左半分がスペイン、右半分がフランスにいます。左に見える工場のような建物は、スペイン国鉄Renfeの検車区で、Renfeの大きな看板も見えます。川はこの向こうで大きく右へと蛇行しているため、鉄橋の背後に見える山などは全てスペインです。列車は完全にスペインのこのあたりの市民の足として定着しており、最後の国境の一駅は、利用者が減る感じはしますが、ここは国境の両岸の町が接近していて交流もあるようで、同じスペインとフランスの国境でも、反対の地中海側の険しさとは対照的です。

(撮影:2013年10月)

ザーネン Saanen (スイス)

ベルン州南部の山村の一つ、ザーネンは、1904年にモントロー(Montreaux)からの狭軌鉄道が延びて以来、観光開発も進んだそうですが、もともと山村型農業が盛んなエリアです。険しいアルプスの山々とはまた違った、牧歌的なの雰囲気の強い地域で、これもまた山国スイスらしいと言えます。ザーネンはまた、ドイツ語圏ですが、フランス語圏とのボーダーに近いです。同じ国なのに隣の村の人は言語が違う、といった微妙なエリアなので、バイリンガルの人も多いようですが、それでも村の言語は圧倒的にドイツ語だそうです。

f:id:localtraineurope:20141004083855j:plain

山村部は冬の日が陰るのが早いです。特に加工もしていないのですが、色温度がかなり高かったようで、こんな青みの濃い写真になりました。軽便鉄道なので、線路とホームの段差もほとんどなく、簡単に線路に入れてしまいますが、そこへ立派なパノラマ客車を繋いだ列車が堂々と入線してくるさまは、壮観です。

(撮影:2011年12月)

ホルネー・スルニェ Horne Srnie (スロヴァキア)

スロヴァキア北西部にある国境駅、ホルネー・スルニェです。駅の南にある小さな村の名前で、人口は3千人弱ということです。きっと観光客など来ないけれども、平和で静かな所なのでしょう。スロヴァキア国内の短距離ローカル列車が、朝夕を中心に一日数往復あり、ここで折り返していきます。

f:id:localtraineurope:20141005074852j:plain

 次の駅は国境を越えてチェコになります。しかし、国境を越えても大きな町があるわけでもないので、鉄道での流動は風前の灯のようです。貨物は通るのかもしれませんが、旅客列車は現在、一週間に一往復。一応線路を残しておくために、線路の錆止めを兼ねて走らせているのではないかと思います。

 (撮影:2011年10月)

グロジスク・ヴィエルコポルスキ Grodzisk Wielkopolski (ポーランド)

ポーランド第五の都市ポズナン(Poznań)から南西へ、ヴォルシュティン(Wolsztyn)へと向かう単線のローカル線の、途中では一番大きな町が、ここグロジスクです。いかにもポーランドという感じの平坦な平原の中にある小さな町です。かつてビールの生産地として知られていました。ローカルにはグロジスクだけで通じますが、ワルシャワの南西にも、グロジスクで始まる別の都市があるため、正確にはこの長い地名を言わないといけません。

f:id:localtraineurope:20141005074645j:plain

日によって多少変わるようですが、基本的にはこの路線の7往復のうち2往復が、蒸気機関車牽引の客車列車です。念願かなってその列車に乗った時の一コマです。冬のオフシーズンだったこともあり、鉄道マニアはわずかで、沿線で撮影している人も見かけず、ほとんどの乗客がごく普通の地元の用務客でした。この駅でも、蒸気機関車などに特に関心もなさそうなローカルな人たちが何人も降りていきました。機関士に向けてホームで発車合図を出した車掌さんが、動き出した列車からホームを監視しています。

(撮影:2013年1月)

レディーバンク Ladybank (イギリス)

この何気に意味ありげな駅名は、スコットランドのエディンバラ(Edinburgh)から北上した内陸部にある駅です。ダンディー(Dundee)、アバディーン(Aberdeen)といったスコットランド東部の主要都市へ行く複線の路線から、パース(Perth)へ行く単線の支線がここで分岐します。このあたりは、エディンバラとグラスゴー(Glasgow)というスコットランドの二大都市のどちらへも便利なように、なかなか複雑に路線が張り巡らされています。

f:id:localtraineurope:20141002052710j:plain

この列車はエディンバラ発パース経由インヴァネス(Inverness)行きです。夕方の帰宅時なのに空いていました。ここからパースまでは長い単線区間に入るため、ここでパース方面からの列車と行き違います。その行き違い列車が遅れているとアナウンスがあったのでホームに降りてみました。車掌さんは気さくな人で、遠慮がちにホームに降りようとする私に対して、まだ来ないから大丈夫と言ってくれました。おかげで撮れた写真です。ちょこっと話をしただけでしたが、そんな小さな出来事一つで旅の印象も豊かになるものです。

(撮影:2013年8月)